糖尿病とともに生きるために考えてほしいこと

 

 わが国では糖尿病患者数は年々増加し、糖尿病は今や珍しい病気ではありません。しかし、多くの方は、糖尿病と診断されたとき、糖尿病について、誰に、どこまで話しをしたらいいか、何を基準にして考えればいいか、悩み、迷い、葛藤しているのではないでしょうか?誰にも相談できず、結局はその場の成り行きで選択しているのが現状ではないかと思います。

 糖尿病の場合、その病状が他の人の目に見えないので、ご自身が話さなければ、病気であることはわかりません。糖尿病であることを他者に話す必要がないので話さないという方もいらっしゃると思いますが、糖尿病を隠し、そのために自己管理に支障をきたしている方も少なくないと思われます。他の人に病気について話すことは、非常に複雑で、デリケートな問題だからです。

 自分についてのプライベートな情報をありのままに相手に伝えることを心理学用語では「自己開示」といいます。自己開示は、対人関係やコミュニケーションの親密化過程における重要なプロセスであり、他者との人間関係を規定する重要な要因の一つです。糖尿病の重症合併症の予防、生活の質(QOL)の低下を防ぐためには、良好な血糖コントロールをめざした適切なセルフマネジメント(自己管理)が必要ということは広く認識されていますが、自分が糖尿病であるということ、糖尿病のために運動・食事・薬物療法などの治療をしていること、糖尿病についての悩みやストレスを話したり、療養のための協力や支援をお願いしたいとき、自己開示するかどうかの選択は糖尿病のセルフマネジメント行動に影響する重要な要因の一つと考えています。

 糖尿病について自己開示することで、自己の否定的な側面を他者に知られるというリスクや糖尿病であることで受けるかもしれない差別や偏見、そのことで受ける心理的ストレスなどのデメリットがある一方で、低血糖時の危険回避につながるという研究結果(Berlin,K.ら,2005)もあり、周囲のサポートの獲得、心理的ストレスの軽減や、自己管理行動を優先しやすくなるなどのメリットがあると言われています。私たちが行った研究でもそのような結果がみられました。また、日本は災害の多い国ですが、被災者の避難生活において糖尿病であることを言えないがゆえに避難所での困難があったことも東日本大震災などで報告されています。

 糖尿病患者様がそのようなメリットやデメリットを知ったうえで、糖尿病についての自己開示の選択(意思決定)をしているかというと、糖尿病の自己開示に関する情報が不足しているのが現状ではないでしょうか。

 私たちが望ましいと考える選択(意思決定)は、患者様ご自身が、糖尿病の自己開示によるメリットとデメリット(個人的なものを含めて)について熟考した上で、ご自身が望む「人間関係・日常生活」と糖尿病療養の間で折り合いがつき、よりよいと思える選択(意思決定)です。

 そこで、糖尿病の自己開示について、より良い選択(意思決定)ができるように、「糖尿病の自己開示における意思決定支援ツール・ガイド」の作成を試みました。糖尿病の自己開示における意思決定に関しては、未知のことが多く、今回このWEBページに掲載いたしますツール・ガイドも完成途中といえるものです。が、皆様のご意見によって今後さらによりよいものに発展することを切に願っています。選択は力となります。しかし、その選択した結果は自分自身で引き受けなければなりません。その選択によって、人生が大きく変わることもあります。皆様がより良い選択ができることを願って・・・。

研究者代表 大阪府立大学大学院看護学研究科 南村二美代 

 

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