糖尿病の自己開示のメリットとデメリットの例

 個人的な自己開示のメリット、デメリットについては、ご自身でよく考えてみてください。

 ここでは、今までの研究から考えられるメリットとデメリットについて参考までに記載いたします。これ以外のメリットとデメリットが存在する場合は大いにあります。その場合、ぜひ、このサイトのアンケート欄に情報を提供くだされば幸いです。皆様とともにこのツール・ガイドの精度が上がっていくことを望んでおります。

 

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糖尿病の自己開示のメリット

 アメリカ糖尿病協会コンプリートガイド(池田義雄監訳,2000)1)では、糖尿病を話す理由について、以下のように記載されています。

  • インスリンや経口糖尿病薬を使用しているなら、低血糖反応時、反応が重篤で、自分自身で対処できないかもしれないとき、周囲の人々のサポートが得られます。
  • 明らかにすることで、人々に糖尿病について、より多くのことを知ってもらうのに役立ち、糖尿病患者様が、他の人と変わらないと示すことにより、偏見と戦うのに役立つ。話さないことで恥ずかしいと思っていることや隠し事をしているというメッセージを送っているかもしれません。
  • 皆に話すことで、人生の大きな秘密がなくなり、どの人に話し、どの人に話していないかを把握しておく必要がなくなります。
  • 糖尿病であることに折り合いをつけるのが困難な時に、人に話す過程が、糖尿病を受け入れることに役立つかもしれません。
  • 糖尿病について話すと、人々は症状と治療について学ぶことができます。結果としては、自分も糖尿病ではないかと疑う場合、早期治療ができるかもしれません。
  • 糖尿病であることを話すことにより、誰が真の友人や仲間であるかがわかります。真の友人は、皆様をあるがままに受け入れます。糖尿病であるからといって、拒絶するような「友人」をおそらく、皆様は望まないと思われます。

1)引用文献:アメリカ糖尿病協会 池田義雄監訳(2000):糖尿病コンプリートガイド,医歯薬出版,東京.

 

 日本人を対象とした私たちの研究結果2)3)でも、糖尿病についての自己開示は以下のメリットがあることが明らかになりました。

  • 糖尿病療養生活上の自己管理を遵守しやすい
  • 低血糖時などに身の安全が得られる
  • 周囲の人々のサポートが得られる
  • 気が楽で居心地がよい
  • ストレス軽減できる
  • 他の人に糖尿病である自分を理解してもらえる
  • 他の人と親密化・コミュニケーションがはかりやすい
  • 孤独感が軽減する
  • 他者へ糖尿病についての知識・情報を提供できる
  • 糖尿病である自分を自覚する

 

☆補足☆

 日本は災害の多い国です。災害時は情報だけでなく、心身ともに、物理的、社会的な色々なサポート

が必要になると思います。その際、必要に応じて、糖尿病について自己開示することは、とても重要

になります。

 


糖尿病の自己開示のデメリット

 アメリカ糖尿病協会コンプリートガイド(池田義雄監訳,2000)1)では、糖尿病を話さない理由について、以下のように記載されています。

  • プライバシーを維持したいと思うかもしれません。どのくらいお金を稼いでいるかについて必ずしも話さないように、糖尿病について議論したくないかもしれません。
  • 話さないなら、糖尿病であるための差別を受ける危険性が低くなる可能性があります。

1)引用文献:アメリカ糖尿病協会 池田義雄監訳(2000):糖尿病コンプリートガイド,医歯薬出版,東京.

 日本人を対象とした私たちの研究結果2)3)でも、糖尿病についての自己開示は以下のデメリットがあることが明らかになりました。

  • 心理的負担やストレスになる
  • 居心地悪さや嫌な思いをする
  • 話していない相手に対する後ろめたさ、隠すことやうそをつくことの罪悪感、否定的感情(怒り、哀れ、悲しみなど)
  • 人に同情されたり、人に気を遣われたり、特別扱いされる
  • 気を遣う
  • 社会的差別
  • 人に弱みをみせることになる
  • 糖尿病である自分を自覚する(他の人と違うという思いなど)

 


<文献 他>

1引用文献:アメリカ糖尿病協会 池田義雄監訳(2000):糖尿病コンプリートガイド,医歯薬出版,東京.

2Fumiyo Minamimura (2016):“The merits and demerits of the disease disclosure or non-disclosure to other people in patients with diabetes”, The 19th East Asian forum of Nursing Scholars(Chiba, Japan)研究発表

3南村二美代(2013-2014):独立法人日本学術振興会科学研究費補助金(研究活動スタート支援)
研究課題:糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する研究~意思決定支援プログラムの開発にむけて(研究課題番号:24890205)