在宅看護学分野

少子超高齢社会を迎え、地域包括ケアシステムの構築が推進されており、医療はそれぞれの役割・機能に応じて、地域の医療・介護・福祉の関係機関との連携を強化し、入退院支援や在宅医療の充実に向けて取り組むことが求められています。看護も病院中心から地域でより生活に密着した活動を展開する時代となり、地域包括ケアを担い地域共生社会を支える人材の育成や新たな活躍の場の創造が急務です。

在宅看護学分野は、大学院博士前期課程において修士論文コースと専門看護師(CNS)コースを設置しており、在宅で療養する人びととその家族への質の高いケアを探求し、研究と実践の融合による専門性の深化を目指しています。本分野の修了生は、19名が在宅看護専門看護師・地域看護専門看護師の認定を受け、訪問看護ステーションや退院支援部門で活躍しています。

また、看護学研究科では、大阪府より訪問看護推進事業の訪問看護専門研修(指導者向け)を受託しています。在宅医療を担う訪問看護師等の専門職の人材育成を図ることを目的に、本学が有する教育機能と専門性の高い人材を活用し、訪問看護従事者の教育・指導に携わるみなさまに対する研修を企画・運営しています。
http://www.nursing.osakafu-u.ac.jp/ohc/

教員紹介

教授 三輪 恭子(地域看護専門看護師)

研究テーマ

  • 在宅療養移行支援、入退院支援に関する研究
  • コミュニティヘルスナースのコンピテンシーに関する研究
  • 地域におけるアドバンスケアプランニングに関する研究

主な業績

  • 大阪府入退院支援の手引き:大阪府福祉部高齢介護室介護支援課,2018.
  • 変化に気づき介護と医療をつなぐ確認シートの手引き~より良い在宅生活を継続するために~:大阪府福祉部高齢介護室介護支援課,2019.
  • 専門職による健康相談・保健指導の提供を行う地域に根付いた窓口に関する調査研究事業報告書:令和元年度厚生労働省老人保健健康増進等事業,2020.

※詳細は大阪公立大学研究者詳細をご覧ください。

 

准教授 岡野 明美(地域看護専門看護師)

研究テーマ

  • 『認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センター保健師のコーディネーション』に関する研究
  • 『地域で暮らす高齢者の倫理的課題の発見と支援』に関する研究
  • 『地域包括支援センター職員の地域診断』に関する研究

主な業績

  • 認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センター保健師のコーディネーション尺度の開発.日本地域看護学会誌, 23(1),4⁻14,2020.
  • 保健師のコーディネーションの概念分析.大阪府立大学看護学雑誌.24(1),21⁻30,2018.
  • 高齢者が暮らす中で生じる倫理的課題とその支援. 日本CNS学会誌,4,15⁻21,2018.

※詳細は大阪公立大学教員詳細をご覧下さい。

 

講師 深山 華織

研究テーマ

  • 家族介護者の就労継続のための支援に関する研究
  • 家族の就労により日中ひとりで過ごす要介護高齢者への支援に関する研究
  • 在宅実習における学生のルーブリック評価表を用いた学習効果に関する研究

主な業績

  • 深山華織,河野あゆみ,白澤政和ほか(2020):介護支援専門員による家族介護者の就労継続のための支援.ケアマネジメント学
  • 深山華織,中村裕美子(2015):同居家族の就労により日中独居ですごす要介護高齢者の不安とその対処.老年看護学,19(2),75⁻84
  • 深山華織,岡本双美子,中村裕美子ほか(2018):在宅看護学実習における学生のルーブリック自己評価表を用いた学習活動の効果.大阪府立大学看護学雑誌,24(1),49⁻56

※詳細は大阪公立大学研究者詳細をご覧ください。

講師 池田 直隆

研究テーマ

  • 在宅看護学、腎移植、医療費、自己管理

※詳細は大阪公立大学研究者詳細をご覧ください。

大学院生への教育

授業科目

博士前期課程

修士論文コース

看護学特論、在宅看護学援助特論Ⅰ、在宅看護学援助特論Ⅱ、在宅看護学援助特論Ⅲ、在宅看護学演習ⅠA、在宅看護学演習ⅡA、在宅看護学特別研究

 

CNSコース

在宅看護学特論、在宅看護学援助特論Ⅰ、在宅看護学援助特論Ⅱ、在宅看護学援助特論Ⅲ、在宅看護学演習ⅠB 、在宅看護学演習ⅡB、在宅看護学実習、在宅看護学実習、在宅看護学課題研究

 

博士後期課程

在宅・老年看護学特論、在宅・老年看護学演習、生活支援看護学特別研究

 

院生の声

現在、博士前期課程(CNSコース)2名が在籍しています。

博士前期課程 CNSコース2年 遠藤 優希

私は訪問看護ステーションで働いている中で、多職種の協働に難しさを感じることがあり、地域でのチームの力が向上するにはどのような関わりができればよいのだろうと思いCNSコースに入学しました。大学院生活は始まったばかりですが、知らなかった概念を学び、自分の経験や価値観からでなく理論に基づいて考えることの大切に気が付き、新たな興味がたくさん出てきました。様々な分野の仲間たちとディスカッションすることで考え方の幅が広がることも感じています。CNSの視点ではどう考えたらよいのか、実践をするには何が必要なのかを学んでいきたいと考えています。

 

博士前期課程 CNSコース2年 堀田 洋子

入学前は訪問看護ステーションで働いていました。ここ10年子育てを生活の中心に置いていたため、勉強会や研修会には思うように参加できず焦りを感じることもありました。訪問看護で自分自身が感じた疑問点や対処に困った症例への対策が不明なまま、日々の訪問看護を実践している点も納得できないようになってきました。「わからないことを学びたい。自分自身で考え行動できる訪問看護師になりたい」と考え、大学院での学びの道を選びました。

大学院に来て、自分の無知さを思い知らされています。利用者や家族の思いに寄り添いながらも、迷い、苦しんでいることに対して専門家としてヒントを与えられる看護師になりたいと考えています。大学院では、苦手としている自分の考えを相手にきちんと伝えられるコミュニケーション能力を学びたいと思っています。また卒業までには、在宅での終末期患者の支援のあり方について学びを深めていきたいと考えています。

 

博士前期課程 CNSコース修了生 渡邊 まこ

私は急性期病院の訪問看護室で長年勤め、医療依存度の高い療養者など、やりがいを感じていました。しかし、近年の目まぐるしく変わる医療の状況や在院日数の低下から、病院内にいる訪問看護師として新たな役割があるのではないかと考え、大学院に進むことを決めました。

CNSコースでは、訪問看護の実践だけでなく、ステーションの運営、教育、病院や地域との連携といったシステムについても学びます。また、フィールドワークや修了生の外部講師から、さまざまな現場で実践されている在宅看護に触れる機会もあり、刺激を受けることもできます。

今後、病院が医療に特化していく中、在宅看護の果たす役割はさらに大きく、複雑になります。訪問看護の現場を離れることに躊躇もありましたが、大学院では在職中には学べなかった学びが非常に多く、今後のキャリアにおいて、価値のある2年になると感じています。