CNSインタビュー 新家静さん

奈良市保健所 地域看護専門看護師
新家 静

 

Q.大学院で学んでいかがでしたか

世界が晴れました。

保健師は一人で担当していることが多くて、対象の担当者として、虐待でも人工呼吸器着けた患者さんでも、精神疾患の方でも、担当者として責任が本当に重くて、いつもこれでいいのかなと、ずっと悩みながらきていました。大学院に入って、看護倫理や看護管理など、沢山のことを勉強する中で、考える道筋ができました。「これで良かったんだ」とか、「こうしたから上手くいかなかったのかな?」とか、自分の行動を振り返ることが出来るようになったと思います。それに、自分に自信がつきました。また、大学院の入学で沢山の人達との出会いがあり、その一つ一つが大きな宝になったと思います。

 

Q.仕事にいかされている大学院の学びは

大学院の授業は今まで受けてきたような講義形式ではなく自分達がプレゼンテーションをしながらすすめていきます。プレゼンテーションについては事前に指導を受けに先生方の所に行くのですが、先生方はわたしたち学生に考えさせる点で妥協されることはなく、「もう、これでいいよ。」と言ってくださらないのです。その中でまた院生同士で様々検討して、これで完璧と考えても、また「こうじゃないの」とのご助言があり、尽きることのない御指導をいただきました。そのことで随分プレゼンテーションの力、考える力がついたと思います。以前も看護に対する「こうなったらいいな」といった思いだけはあったのですが、伝える力が不足していたと思います。感情や情熱だけでは人には伝わらない、伝え方も大切だと学びました。

以前は理論は難しいもので、現場から遠く離れたものっていう意識があったのですが、それが変わりました。先人の看護者達が積み重ねてきた経験が理論なのだと今は感じていて、目の前にある課題を解決していく道具という風に身近なものとして捉えられるようになりました。客観的に人に伝えられるようになりました。やはり大学院で様々なことを知り、学び、考えようとするトレーニングを受けたからだと思います。

 

Q.仕事のやりがいや喜びは

修了してから保健師の仕事の面白さも10倍くらいになりました。昔から辞めたいと思うことや仕事が嫌だと思ったことは一回もなかったのですが、大学院修了後より仕事が好きになって、人への興味が増しました。わたしたちは人間を対象にしています。自分とは違う考え、家庭環境を理解し、その人自身が感じている悲しさや辛さの大きさは分からなくても、一緒に寄り添っていきたいなって思えるようになり、共感する力が付きました。

大学院の授業では、自分の事例を提出してディスカッションするのですが、その時に仕事の中で自分が共感的姿勢で関われなかった事例を意図的に取り上げました。「自分の子どもを虐待してしまった事例」や難病で「本当は生きたいけれども周りに迷惑掛けたくないからと積極的な治療を選択しなかった事例」、「精神疾患を患っておられて自殺された事例」など、自分の思考の中では理解出来ないような事例を皆でディスカッションしました。大学院でこのような機会がなければ、辛い事例でしたので振り返って考えることはなかっただろうと思います。事例検討の中で、様々なことが整理され、考え方や対応方法についての気づきが自分の中で出来てきたのだと思います。領域が違っても、他の方の事例であっても、自分が抱えていた問題と重ね合わせて考えられるところが沢山ありました。そういった学習を重ねたことは大きかったと思います。

 

Q.仕事で役立っているアイテムは

保健師の場合いろいろな所に行くのですが、私は常にスニーカーです。ちょっと穴があいているのですけど。走れますし。子どもの支援をしていたら、本当にいろんな所にちょこちょこちょこ行ってしまったり、走って追いかけることもあります。スニーカーでないと仕事は出来ないなと思います。