学生の声(看護学研究科)
前期課程 修了生の声
永田和也
人・環境支援看護学領域 看護管理学分野
私が博士前期課程に進学したきっかけの一つは、病棟で教育担当者をしていた際の新人教育・継続教育に関する組織との間で生じた葛藤を解消するためでした。
その当時は、様々な課題や問題に対して、組織の一員としてどのように行動すべきであるかを理解できているようで理解していませんでした。自分自身が正しい・理想と考える管理・教育を確かめるために大学院の門を叩いた記憶があります。その当時管理職でもなかった私が専攻に考えていたのは看護教育学でしたが、当時の看護教育学の教授と事前面接をした際に、私自身のビジョンは看護管理学にあるという指導をいただき「看護管理学」を学ぶことを決心しました。
私には妻子がありお互いが育児や家事を助け合いながら日々の生活を送っていました。そのため、お互いが協力しながら成り立っていたことを破綻させるわけにはいきませんでした。さらに、大学院進学するにあたっての絶対条件として決めていたことは、「働きながら」でした。そのような厳しい条件を自分で設定してしまいましたが、本学大学院には長期履修制度がありましたので、迷わず利用させていただきました。
大学院の前半では、他分野の大学院生と共にプレゼンテーションやディスカッションを行うことで様々な価値観に触れることができ自己の成長に繋がりました。
後半は、看護管理の視点から新人教育を取り巻く事項について深めていきました。この深めていく過程は「自分自身との戦い」であり辛かった記憶がありますが、研究が完成した時の達成感は今でも忘れられません。指導教授が熱心かつ的確に指導してくださることで少しずつ前に進んで行けたのだと思います。
大学院で学びたい・研究したいと考えておられる方の動機・価値観は様々であると思います。私の場合は「臨床教育現場での組織との葛藤」でした。
今考えれば、私自身のキャリアの節目にあったのではないかと考えています。そのような中で、大学院で学び・指導を受ける過程の中で、「自分自身と向き合い、みつめ直すことができた」のは、共に学んだ同期や教授の指導・支援があったからではないかと考えています。
現在も大学院当時と同様の職場で勤務しています。めまぐるしく変化し難化する医療界の中で、私たち看護職が如何に「患者さんの為に」という倫理的感性を持てるような職場環境を作ることや、スタッフたちの多様性を理解しやりがいや働きやすさに繋がるような支援を行うことに注力しながら日々奮闘しています。
豊島美樹
療養支援看護学領域 急性看護学分野 CNSコース
私の臨床での経験は、集中治療室に勤務しながらRST(Respiratory Support Team)やRRT(Rapid Response Team)活動など院内のチーム医療のメンバーとして活動していました。その中でクリティカルケア領域の患者家族との関わりを通し、本人の意思を尊重した治療方針の決定や予断を許さない状況における家族の代理意思決定、倫理的問題が潜んでいる場合など患者家族にとって何が最善のケアや支援なのかを考えるようになりました。これらの問題を解決するために今後どのような学びを深めればよいかを考えた結果、急性CNSコースへの道を選択しました。
大学院では、専門領域だけではなく理論看護学や看護学研究法、看護管理学など系統的なカリキュラムにより、これまで自分になかった看護に対する多角的な視点を養うことができ、他分野の院生とのディスカッションを通してさらに深めることができました。
これらの学びから修了時にはクリティカルケア領域だけではなく看護学を発展させるために自らが実践すべきことの示唆を得ることができました。
現在は、急性・重症患者看護専門看護師として集中治療室で直接実践を行いながら、病院全体を視野に入れた横断的な活動も行っています。
近年、ICU退室患者の身体・認知機能、メンタルヘルス障害に加え、その家族もメンタルヘルス障害を来すPICS(Post Intensive Care Syndrome)が問題となっています。これらの問題を解決するため、多職種の専門性を活かしたチーム医療を調整しながら患者家族を全人的に捉え、入院から退院へ向けた継続的な支援体制の構築に取り組んでいます。
後期課程 修了生の声
卯川久美
生活支援看護学領域 看護管理・教育学分野
私にとっての博士後期課程は、自己の研究テーマを追求するため、全速力で走りぬけた時間でした。
初年度は、研究に必要な力をつけるため、必須の看護学研究方法論に取り組みました。日本ではまだ出版されていなかったPolit & Beck のNursing Research(Ninth Ed)を和訳し、その内容を踏まえて、先生方の前で質的研究法、量的研究法、および英論文のクリティークなどのプレゼンテーションを行いました。何度も何度も資料を作成しなおしたり、同期の方々と話しあったりと大変な思いをしましたが、今となっては、あの時間のおかげで、後の文献検討や研究を進めるにあたり、とても役に立ったことに気づくことができました。
初年次の後期に行った概念分析では、さまざまな文献から概念を明確に定義していくことの難しさや、面白さを感じることができました。これらは修士の時には味わえなかったものであり、苦しみのなかの充実感を味わうことができるのも博士後期の醍醐味だと思います。
自分の研究を遂行していく過程では、主指導の先生、副指導の先生に貴重な意見を頂きながら、研究の中身を深めていくことができました。自分では十分に理解しきれていない点は、先生方が的確に指摘して下さいました。その指摘を受けて、自分で問をたて、解決していく道筋は苦しいながらも必要な過程でした。
今後は、大阪府立大学大学院で学んだことを活かして、後進の育成と自己の研究を発展させていきたいと思います。
笹谷真由美
生活支援看護学領域 在宅・老年看護学分野
私は大学等の教育機関で勤務しながら、博士前期・後期課程と大阪府立大学大学院で学びました。働きながら学ぶことはかなりのエネルギーが必要ですが、その反面、大学院で学ぶといった異なるフィールドをもつことは大きな刺激となり、働くうえでのモチベーションにもなったと思います。
博士後期課程では前期課程と比較すると学生も少人数であり、コースワークでのプレゼンテーションにおいても、準備すべき内容や役割も多く当初はできるのだろうかと不安になることもありました。
しかし、同期生と励ましあいながら、わからないことや疑問点を多くの文献を紐解いて調べたりすることで、探究することの楽しさを実感しました。
また、コースワークで行ったことは、その後の研究にすべてが活かされていることに気付きました。先生方は先を見据えてカリキュラムを検討してくださっているため、私自身はその後の研究をスムーズに進めることができたと考えます。研究を進めるうえで、先生方は労を惜しまず時間を作ってくださり、多角的に視る力を養ってくださったと思っています。
博士後期課程では特別養護老人ホームの看護師の看護実践能力尺度を開発しましたが、今後も改良を重ねて実践に活かせるようにしていきたいと思います。
研究の楽しさを教えてくださった先生方、学友の皆さんに感謝しています。