2008年度 マヒドン大学との交換プログラム報告

本学看護学部/看護学研究科とタイ王国マヒドン大学は平成20年4月に協定を締結し、大学院生の交換プロ グラム(Exchange Program)を行うことが決定された.マヒドン大学はタイで初めての看護学学士教育を開始した歴史のある大学である.大学院の修士課程は1977年 に、博士課程は1989年に開設され,タイの看護学の発展に貢献している。本学部/研究科はマヒドン大学の看護学部(シリラート校)と医学部看護学科(ラ マティボディ校)の両校との交流を開始した。Exchange Programの目的は、

  1. 国際的視野を広げること、
  2. タイの看護システムと専門看護師(CNS)の役割を学ぶこと、
  3. 当該学生の専門分野での研究者と討議を行うこと、
  4. タイの大学院生、医療関係者、研究者と交流を深めること

である.

平成20年8月31日より9月14日の2週間、本学より大学院生をシリラート校,ラマティボディ校それぞれに2名ずつ派遣した.学生は慣れない英語に苦労しながらも、大学院生との交流や病院での研修を無事に終え、大きな成果をあげることができた.

タイ・マヒドン大学への交換プログラムに参加して

大阪府立大学大学院看護学研究科
療養支援看護学領域慢性看護学 CNSコース
博士前期課程1年
伏田香津美

平 成20年9月1日から9月12日の約2週間,大阪府立大学看護学部とマヒドン大学看護学部によるExchange Programの一環としてタイのマヒドン大学に訪問しました.現在,私は特に慢性看護と慢性疾患看護CNSの役割に関心を持っています.研修においては タイ・マヒドン大学およびシリラート病院をはじめ他施設訪問において,多くの大学教員や大学院生,病院スタッフの方々と交流を持つ機会を持つことができ, タイの医療の現状,マヒドン大学の教育カリキュラム,慢性疾患および慢性呼吸器疾患を持つ人への看護ケアの考え方や実践,大学院修士課程を卒業した看護師 に今後求められる役割について学びを得ることができました.

2週間の滞在を,大学附属の寮ですごし,寮の学生さんとの生活を通してタイの 文化や食事,国民の生活を体験し,タイの食事は辛いものだけでなく,甘 いものも多くあることに驚きました.タイでは心疾患、脳卒中が死亡原因の上位にあり,タイでは現在高血圧,糖尿病,肥満が問題になっています.近年ファー ストフードの習慣も海外より入ってきたこともあり,特に小児領域においても問題となっています.これらの問題は心疾患や脳卒中などを引き起こす原因となる ため,国の方策としてヘルスプロモーション,慢性疾患管理に力が入れられています.病院では慢性疾患に対して看護師による患者教育が日本同様に積極的に行 われ,セルフケアやセルフマネジメント支援が積極的に行われていました.地域においては,ヘルスプロモーションを促進させ,セルフマネジメントの継続に必 要な患者・家族のエンパワメントを高めるために,タイではボランティアの活動をさかんに取り入れていることがわかりました.

今回マヒドン 大学での研修を経て特に驚いたことは,マヒドン大学の修士学生や、シリラート病院をはじめ各施設においても,ほとんどのスタッフが日常 会話以上の英語力・コミュニケーション力を持っているという現状でした.海外の人々との情報交換する機会の増加や,海外の研究者らと活発に議論を交わすこ とは有意義であり,英語でのコミュニケーション能力を研鑽する必要性を感じました.また,大学院生は病院実習の中で,アドバンストナースとして病棟の現状 を分析し,問題を見つけ,改善するために根拠を示しながらイノベーションを行う役割を担っていました.イノベーションは患者のアウトカム評価,研究として 取り組まれていました.病棟にチェンジエージェンシーとして存在していたのがとても印象的でした.

2週間の研修を通して,抱える問題や医 療システム,文化など,タイと日本という国の違いはありますが,両国とも修士課程を卒業した看護師は,より効 果的で根拠ある看護ケアを実践する役割,実践の中で研究に取り組み推進する役割,病棟やスタッフの抱える問題を顕在化し,改善する役割を期待されているこ とは共通していると実感しました.慢性疾患看護に求められるものも多く共通していることを知ることができました.今回得た学びを今後の看護実践や研究に活 かすために,到達目標やそのためのモチベーションの保ち方を工夫し日々努力することが今の私たちには必要ではないかと考えています.

この研修を通して,大阪府立大学看護学研究科,国際交流委員会の先生方,マヒドン大学看護学部の先生方,各病院・施設のスタッフの方々,看護学研究科の院生の方々に多くのご指導とご配慮をいただき,無事に研修を修了できたことに深く感謝申し上げます.

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Exchange Program での学びについて

大阪府立大学大学院看護学研究科
療養支援看護学領域慢性看護学
博士前期課程1年
小浜さつき

  マヒドン大学の先生方,院生との意見交換や,病棟で働く看護師の活動を見学する中で,タイと日本での保健医療,看護に関する共通の課題や文化の違 いなどを検討することができました.慢性疾患の看護においては,タイは日本と同様に高齢化や生活習慣病の増加という課題を抱えています.また,食生活の変 化に伴い肥満が増加していること,交通事情から事故死や頭部外傷患者が多いことなど,個々の国の社会背景によって抱える問題が異なっていることを学びまし た.さらに,仏教が強く根付いたタイでは,地域での支えあいの精神が強く,APNが人々の健康管理や相談活動などに専門性を発揮していることを学びまし た.看護師の育成については,大学や大学院での学習や教育は日本と類似したものでしたが,タイでは看護師免許が5年の期限での更新される制度があり,免許 取得後も研修会や学会で単位を取得する,または進学により免許取得試験が免除され,勉強の継続が免許の維持とつながっていました.学生が,患者のよりよい 回復のために研究を続け,貢献したいと熱意をもって話していた姿に大きな刺激を受けました.

私は,脳卒中発症後のリハビリテーション看護 に関心があり,脳卒中の急性期から慢性期の看護について学ぶ機会を得ました.入院患者のほぼ全員が自宅 退院であり施設入所はごく少数のため,セルフケアを評価し向上させること,早期からケアに家族の協力を得ること,つまりリハビリテーションの介入方法(歩 行介助など)は直接家族に指導して実践を見守るという視点で,早期から家族を巻き込んだ教育や指導が行われていること,など非常に勉強になりました.

学生さんには,忙しいなか生活面を支援してもらい大変感謝しています.また,機会を与え引率いただいた本学の国際交流委員の先生方に感謝しています.学んだことは今後の看護実践や学習に役立てていくつもりです.

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